人はなぜ不倫をするのか~不倫に至る経緯・理由・方法・心情に迫る~【永遠につづく愛の刹那】第3話

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一瞬のその場限りに存在する愛のはずだった。しかしそれは、許されざる終わりのない激しい愛の始点になった。これは膨大な取材をもとに不倫の真実に迫るドキュメンタリー小説です。

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え、水商売?

愛の巣(マンション)を手に入れ、性病も乗り越えた二人だが、琴美がまたもめごとの種をもってきた。やや年齢層が高いガールズバー(ラウンジ)で働くというのだ。バイトは今まではパチンコ屋の中にある食事処や飲食店を掛け持ちしていた。それらを辞めてガールズバーに行くという。

琴美は女性としての華は30代までと考えているようで、その間にそのような店で働いてみたい。今やらないと一生できない。そう考えたという。瀬名はとても嫌がったが琴美はガールズバーの裏方をやると嘘をついて始めた。そんな嘘を信じるほど瀬名はバカでななかったし、琴美もすぐに白状した。

瀬名が止めるのも聞かずに始めた水商売。瀬名は琴美のことが大好きだったが、好きな気持ちを抑えようとした。ガールズバーで他の男性客に口説かれたり、同伴したりすることを想像すると辛くなるしイライラした。だから琴美のことは彼女として付き合ってはいるが、セフレ程度に考えておこうと。そんな風に考えた。

セフレなら独占できなくてもいいし。大切だし大好きな彼女だと思うほどつらくなるからね。相手に期待しないような関係でいようと考え始めるのは僕だけではないのでは?

しかし簡単に割り切れるものではなく瀬名は苦しい時間を過ごすことが多くなった。たまにガールズバーに遊びにいってあげたとしても、他の客と楽しそうに話す琴美を見ることになり、余計にイライラした。仕事終わりまで待って一緒に帰ることが多いが、琴美が愛の巣(マンション)に寄らずに家に帰ると、瀬名は馬鹿らしくもなった。何のために店に行ったんだか。抱くこともできずに無駄な金と時間を使ったなと。

同伴やアフターで客と外で二人で会い始めたことも瀬名はとてもイライラした。仕事とはいえわざわざやらなくてもよい仕事だ。瀬名は腹いせに他の女性とも会おうかな、そうすれば心のバランスが少しはとれるかもしれない。そう考えていた。

二人の関係に少し亀裂が入り、その亀裂は少しずつ大きくなっていった。

喧嘩の原因は立場の違い

琴美がラウンジで働き始めてからは喧嘩することが多くなった。瀬名はたまに琴美を店まで迎えにいくが、終了予定時刻を大幅に過ぎることもよくあった。多少の待つことは想定していても、2時間、3時間と待たされることもあった。琴美は断れない体質の女だ。店から延長できるか聞かれたときに「無理です」や「30分だけなら」などと言えば済む話しだ。それを言えない琴美にイライラするのだ。

他人にいい恰好をしてしまう人は、大切な人に甘えてしまう(攻撃してしまう)傾向があります。そうなっていないか、たまには自分を振り返ってみるといいかもしれません。

琴美はそれを指摘されると「仕事なんだから仕方がない」「そんなこと言うなら待ってくれなくていい」と自分の行動を変えようとするのではなく、瀬名の言い方や瀬名の態度にケチをつけた。「この日は必ず早く終わらせるから」と約束していても、延長を断れないのだから、琴美の単なる逃げ口上なのだがそれを正当化して相手にぶつける。そして琴美は最後は「そんなにうるさいことを言うなら、いらない」の一言だ。

瀬名は琴美のことが大好きだ。だから別れ話のような雰囲気になると、謝るしかなかった。瀬名は水商売に身を投じた琴美のことが心配でならない。変な男に何かされるのではないか?体を無理やり触られるのではないか?酔っぱらって自ら他の男を誘ったりするのではないか?と悶々と妄想した。

大好きな琴美を都合よく自分だけのものにしておきたい瀬名。いずれ旦那と離婚を視野に自分で稼ぐ力を水商売に求めた琴美。家族を大切にしながら美しい琴美との情事を楽しむ瀬名。瀬名との時間を楽しみながらも自分ひとりで稼いで子ども二人を育てなくてはならないと考えている現実的な琴美。琴美の逃げ口上と表現したが、そういう立場の違いは琴美をイラつかせ、あえて瀬名にぶつけていた面もあった。

この立場の違いによる言い合いはちょこちょこと起こったが、いつも琴美の別れ話のような物言いになったところで瀬名が謝り、関係を維持していた。

お互いに好きすぎて感情のぶつけ合いの大喧嘩

ある時、琴美がラウンジの仕事でとても帰りが遅くなった。明け方の5時ごろだろうか。その日は昼前から瀬名とデートの予定だった。しかし琴美は客の誘いを断れずに、明け方までアフターしてしまったのだ。琴美は睡眠不足で瀬名とのデートをキャンセルせざるをえなくなった。

瀬名は激怒した。ただでさえアフターは嫌だと思っていたのに、そのせいで琴美と会えなくなったのだ。大好きな琴美に客のせいで会えないのだ。いくら仕事とはいえ、必ずしもやる必要がない同伴のために。今までは自分の時間を侵食されることはなかったが、そこにまで影響が出てきて瀬名は我慢ができなくなってしまった。

デートキャンセルの電話中に瀬名は初めて琴美に対してブチ切れてた。琴美は詫びるわけでもなく、仕事だから仕方がないというスタンスだった。「何考えてるんだよ!だからアフターなんてするんじゃないと言っただろう!!ただでさえ嫌だったのになんだよこのザマは!」瀬名は怒りの感情を止められなかった。

こういうことが続くと、怒りを通り越して呆れてしまいそう

気が強く天邪鬼な琴美は、そういわれては引くことができなかった。「こっちは子どもを養うために必死なんだよ。あなたが養ってくれるの?経済的に助けてくれるの!?」とキレ返す。琴美の心の底にいつもあること。私は旦那と離婚しいつか瀬名と一緒になりたいけど、瀬名は家族を捨てる気はなく都合よく私を抱きたいだけ。そういう思いがあるため、瀬名の言葉を素直に受け入れられないのだ。

怒る気持ちは理解はするけど、仕事なんだからもっと大きな心で寄り添ってほしいよ。こっちの方がつらい立場なんだから

しかし電話の向こうで激しく怒鳴っている瀬名が泣いていることに気づくのにそう時間はかからなかった。瀬名も琴美のことを激しく愛している。だから怒りとともに悲しさも爆発し涙があふれていたのだ。琴美はそれを知ると急に申し訳ない気持ちになった。そして喧嘩になると必ず瀬名が謝っていたが、初めて琴美が謝った。

琴美が謝ったことで、その場は落ち着いたのだが、この先何度も似たことが起きるのだった。

シングルマザーの夜の仕事を理解できるか

琴美はまだ旦那と離婚はしていない。しかし別居はしており生活費を多少もらっているとはいえ、経済的なことも含め、シングルマザーに近い環境だ。経済的に自立するために水商売をする女性は少なくないがそれを理解して付き合えるだ男性がどれほどいるか。

水商売は言わずもがな、多かれ少なかれ男性の気を引かなくてはならない商売だ。だから水商売の女性と付き合う男性の気苦労は絶えない。他の男性にとられるのではないか、酔って体の関係になってしまうのではないかと心配するわけだ。もちろん瀬名も例外ではない。

だから、同伴やアフターなど余計なことはしないでほしいと思う。しかし働く女性としては、少しでも売り上げを上げるために仕事熱心であればあるほど同伴やアフターをしてでも売上を上げて、自分の実入りを増やそうとする。お酒が大好きで男も好きで誰とでも寝てしまうダメな女性もいるかもしれないが、それは水商売の女性よりも、単に飲み歩いている女性の方がその傾向は強いかもしれない。

そんなシングルマザーとして生計を自分でたてるために頑張る彼女を、黙って信じて優しく包み込むことができるか。そこが付き合いを長続きさせることができるかの大きなポイントだ。瀬名は理解しようと努力しているが、琴美の「やり方」や「程度」について我慢できずにすぐ喧嘩になってしまう。

いやな客の相手でも仕事と割り切って頑張っている私を、信頼してどっしりと構えていてほしい。

しかし、一緒にいる時間が心地よすぎて、喧嘩してもお互いに引き合い、離れられないでいる。仲直りした後のセックスはより感情が高ぶり、好きな気持ちはさらに増長されていく。

あまりにも僕の感覚と違う行動をとられると腹立たしく感じてしまうのだが、体を重ねると腹を立ててごめんねという気持ちになる。自己満足もあるが彼女を自由にできるのは自分だけなんだと感じることができる。

そして琴美は仕事の日に同伴やアフターをすることはあっても、休みの日に客と会うことだけはしない。だから琴美が客と会うのは本当に仕事なんだと瀬名は信じられているのかもしれない。

お金の問題とか

琴美は瀬名のことを愛している。しかし瀬名に対して不満があった。お金のことだ。瀬名はサラリーマンとしての収入は多い方だが、それでも一般のサラリーマンだ。家族を養い住宅ローン、自動車ローンを払えばそんなに多くの遊び金があるわけではない。

琴美とのデートでは瀬名が多く払う。お正月、クリスマスや琴美の子どもの誕生日などにお年玉やプレゼントをあげることもある。琴美の家に遊びにに行くときは子どもにお菓子を買っていったりお小遣いをあげたりもする。だけど生活費の面倒は見ていない。

それが琴美には不満だった。自分には旦那がいるといっても別居状態で満足な生活費ももらっていない。瀬名はそれなりに贅沢な暮らしをしている。それなのに自分の生活は助けてくれない。そこに不満があった。そのくせにヤキモチをやくし。少しでもよかった。毎月5千円でも1万円でも決まった支援が欲しかった。

最初はそんなこと思っていなかったのに、自分が苦しいと経済的な面倒もっとみてよって思っちゃうことがある。助けてくれないくせに、ヤキモチばかりやくなよって思っちゃう。

それは実際に助かるというよりも、瀬名が自分を本当に大切にしてくれているのだと、思い込むためのものだった。生活を助けてくれているんだ、大切にしてもらっているんだ。そう感じたいのだった。しかしそれを瀬名に言うと、金が目的で付き合っているような誤解を与えそうで怖くて言えなかった。

経済的に助けてあげないとヤキモチやくなという理屈がわからない。金もないくせに愛人作るなよって気持ちならわからなくないけど・・・

それを言えずに琴美は悶々としていたが、あるとき酔いに任せて瀬名にそのことを伝えた。瀬名は案の定イラついた。瀬名としてはプレゼントやお小遣い、お弁当を買っていくなどできる範囲で支援はしていたつもりだった。しかしそれは全く支援として受け取ってもらえていなかったからだ。

自分たちはそういう関係ではない。お互いに好きで付き合い始めたんだ。それでもできる範囲でお金は使ってあげているつもりだったのに。とてもガッカリした。しかし数日後、毎月1万円だけでもあげることにした。本当はもっとあげたいが、余裕がないなかで支援できるのはその程度だ。このくらいなら飲み代を調整すればどうにかできる金額だ。

琴美はたった1万円でも自分を助けるために出してくれるその行動がうれしかった。このような金銭問題もお互いが心から満足できるものではなかったが、お互いそれぞれ気持ちに整理をつけた。お互いのことは大切に思っている。だけど経済的にも精神的にも依存しすぎずに生きていかなきゃ。そう思うのであった。

それでも楽しすぎる時間

しかしお互い一緒にいる時間は楽しすぎる。瀬名と琴美はただ肉体的な快楽を求めるだけでなく、デートであちこちに行った。ディズニーランド、美術館、温泉、スーパー銭湯・岩盤浴、カラオケ、ボーリング、スキー、スケート、プロ野球や高校野球観戦、アメ横や有名商店街、横浜中華街、サザンオールスターズの縁の地巡り、登山、海水浴、様々なビュッフェ巡りなどなど。もちろん、お互いの誕生日には普段いけないような高級レストランで食事もする。

もう瀬名にとっては琴美じゃないと楽しくないし、琴美も同様に瀬名じゃないと楽しくない。

依存しすぎずに生きて行かないととお互いに思っていてもそれは難しいことだった。口論や喧嘩で一旦距離をとったとしても時間とともに距離は縮まっている。その時の行為は距離をとっていた時の寂しさの反動で激しく荒々しく求め合い、前にもましてお互いを愛していった。

多少の喧嘩も含めて、刺激的で楽しすぎる時間を過ごしていた。

しかし、琴美が起こしたこの事件の後、二人の関係は大きな転換点を迎えることになる。

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