人はなぜ不倫をするのか~不倫に至る経緯・理由・方法・心情に迫る~【永遠につづく愛の刹那】第4話

スポンサーリンク

一瞬のその場限りに存在する愛のはずだった。しかしそれは、許されざる終わりのない激しい愛の始点になった。これは膨大な取材をもとに不倫の真実に迫るドキュメンタリー小説です。

スポンサーリンク

お客さんと朝帰りで琴美が嘘をつく

そのは琴美のことをとても気に入っている中古車販売業を営む40代前半の男性だ。瀬名よりも少し年下のその男性は金回りもよく、誕生日には琴美リクエストするものをなんでも買ってくれた。店では琴美に露骨にベタベタするようなことはないが、琴美に好意を持っていることは誰が見ても明らかだった。

瀬名は琴美に好意を寄せる客のこと悪く言うことが多い。とられるのではないかという漠然とした恐怖からであろう。すると琴美は「私も気持ち悪いって思っているから大丈夫だよ」とか「全然タイプじゃないし」など瀬名を安心させる言葉を返す。しかし、その客の悪口を瀬名がいうと「私はそう思わない。あまり悪く言わないでほしいな」というようなことを言い、瀬名を不機嫌にさせた。

そんなある日、琴美はその客とアフターに行った。それから全く連絡が取れなくなった。いつもであれば、1時間に1回くの既読がつき、返事が返ってくるが、全く帰ってこない。時間は2時、3時、4時と進むが返事はこない。既読もつかない。瀬名は心配になり電話をすると電源が切られていた。

結局琴美と連絡がついたのは朝8時ごろだった。

琴美はいつもの店で飲んでいて、話しが盛り上がってしまいつい長居してしまったという。瀬名は信用できなかったが、その場はその言い訳に対して「そうなんだ。わかった」と言った。瀬名は次の日琴美に内緒でその店に一人で飲みに行った。店のマスターと楽し気に話しをし頃合いを見計らってこう聞いた。「昨日は琴美と〇〇(客)がだいぶ盛り上がっていたみたいですね?」と。マスターは「どうだったかな、来たけどすぐ帰っちゃったので」とポロッと言った。

やはり嘘か・・・瀬名は怒りが込み上げてきた。どんなに瀬名が怒るような怪しいことでも琴美は嘘だけつかない。そう思っていたのに、その大前提がガラガラと音を立てて崩れたのだ。もしかすると初めての嘘かもしれないし、今まで何度も嘘をつかれていたのかもしれない。いずれにしても今回瀬名は騙されたのだ。きっとホテルにでも行ってこの二人は抱き合ったのだろう。瀬名はそう確信した。

事実がどうかではない。疑われる行動をすることが問題だと思います。

琴美がどんな言い訳をしたとしても、もう信じることはできない。だから瀬名はこの話しを琴美にしないことにした。そしてもう琴美を信じることを辞めた。そう割り切ると瀬名は何も心配ごとはなくなった。単なるセフレと思い込むことにした。そう割り切れば常に優しい言葉はかけてあげられるから…

自殺未遂!?

瀬名は悶々とした気持ちを心の底に隠し琴美との関係をつづけたが、気持ちを大爆発させてしまうときが来てしまった。

琴美が再びその中古車販売業の客と休みの日に会っていたことがわかったのだ。瀬名にはその日は母親の用事に付き合うから会えないと言っていたのだ。瀬名は母親との用事が終わったら少し会えないか期待して、琴美の家の近くのパチンコ屋で時間をつぶしていたが早々にやられてしまったため、琴美のマンションの前に車を停め、車内で読書をして待っていた。すると、2時間ほど経ったころ、目の前に車が停まり車から琴美が降りてきた。運転手はその客だった。

瀬名は割り切ったつもりだったが、異常に腹が立った。それはそうだろう。割り切ったと周りには言っていたが、気持ちはそんな簡単に切り替えられるものではない。完全には割り切れていなかった。だから腹が立った。瀬名と琴美が付き合っていることは誰にも内緒だ。だからその場は怒りを抑えやり過ごした。その後、瀬名は琴美に電話をした。

琴美は電話に出た。「今日はほんとうにお母さんの用事だったの?」と聞くと琴美は「なんで?そうだけど」と答えた。瀬名は「俺いまマンションの前で琴美を待っていたんだけど。見ちゃったよ?」と。そこから瀬名は止まらなくなってしまった。

琴美の節操のなさをひたすら責め続けた。琴美はいつもの理屈を振りかざす。それはW不倫の関係で自分はいつでも離婚する気があるけど瀬名は離婚するつもりはない。だったら自分の交友関係に口を挟まれたくない。

瀬名は離婚できるかどうかは関係なく、いま付き合っているのだから他の異性と交遊することは控えるべきだろうという考え。だからすり合わないのだがとにかく琴美を責めた。あまりにも責められた琴美は高校生のころリストカットをしたときの気持ちになってしまったようだ。急に大きな声を上げて泣き出して「怖い、リストカットしたときのこと思い出した。もうリストカットなんてしたくない。死にたくない」と言いながら泣いた。

私だけではなく、追い込まれ過ぎると精神が病んでしまう人も結構いると思います。

瀬名は追い詰め過ぎたことについて琴美に詫びた。そして琴美が生きてさえいてくれればいいと何度も伝え、ようやく琴美は落ち着いた。琴美は落ち着いた後、その客とはデートはしたし朝帰りもしたけど体の関係はないと言った。もちろん瀬名は信用していないが「わかった」とだけ言った。

静かに終わりを迎える

それからも瀬名と琴美の関係は続いたが、瀬名はもう一切なにも怒らない。それは怒らないでほしい、追い込まないでほしいと琴美が望んだ結果だ。瀬名がそれを実現できたのは信頼からではなく諦めからだ。そんな瀬名の気持ちが見え隠れするのか、琴美は瀬名との未来はないなと感じたのだろう。

瀬名にしてみれば琴美が信頼を裏切らなければ、そういう未来もあったかもしれない。漠然とそう考えていた。ひと回り年下の琴美の容姿に常に色気を感じ、欲してきた気持ちや感覚は以前と比べ何も変わっていない。だけどそういう琴美の他の異性への対し方を思うと、気持ちがなえることもある。

お互いの気持ちが少しずつすれ違い、先に耐えられなくなったのは琴美だった。琴美は瀬名を忘れようと動き始める。LINEへの返信が遅く少なくなり、電話に出る頻度が減り、会いたいと言うこともなくなっていった。瀬名は「気持ちなんて簡単に変わるものではない」と考えているところがあるので、好意は伝え続けるが、こういうことは説得しても無駄だろうなと心の中で考えていた。

琴美はその後、瀬名に使っていた時間は少しずつ客や他の異性に使うことで、数々の瀬名との想い出に蓋をしていった。そのことを知る瀬名も気持ちの整理をつけていった。

時を経て、激しく求め合い、お互いを理解し合い、気持ちをぶつけ合ったかけがえのない数年間。いまでは二人ともそのときのことを良き想い出として、静かな気持ちで思い出すことがあるようだ。(完)

会いたいけど、会ったらまた愛が止まらなくなりそう

会いたいけど、会ったらまた愛が止まらなくなりそう

コメント

タイトルとURLをコピーしました